高知県香南(こうなん)市の発注工事を巡る官製談合事件で、市職員から入札情報を聞き出し、建設業者に落札させたとして、公契約関係競売入札妨害などの罪に問われた元市議の志磨村公夫被告(61)の初公判が17日、高知地裁であった。志磨村被告は起訴内容を認めたうえで、入札情報を聞いたのは「課長ではなく、清藤(きよとう)(真司)市長です」と述べた。
志磨村被告は逮捕時の調べに対し、入札情報を「課長から聞いた」と説明したが、起訴後に「課長ではない」と変えた。市住宅管財課長の村山敦さん(58)は官製談合防止法違反罪などで起訴されたが、高知地検が今月3日に起訴を取り消す異例の展開をたどった。
志磨村被告は初公判の冒頭、「村山課長から聞き出したと言いましたが、聞いていませんでした。うその供述で村山課長が逮捕・勾留され、人としてやってはいけないことをしてしまいました。村山課長、本当に申し訳ありませんでした」と述べた。
検察側の冒頭陳述などによると、志磨村被告は昨年12月7日ごろ、知人の香南建設元社長の北代(きただい)達也被告(53)から、最低制限価格を市職員から聞き出し、自分に教えてほしいと頼まれて了承。実際に市職員から最低制限価格に近い額を教えてもらい、北代被告に電話で伝えた結果、北代被告が工事を落札したとした。
北代被告は同月22日、高知市の飲食店駐車場で、入札情報を教えた報酬の趣旨で、志磨村被告に10万円分の商品券を渡した。志磨村被告は商品券を売却し、生活費などにあてたという。
志磨村被告は被告人質問で、入札情報を教わった相手について検察官に問われ「北代さんより、清藤市長に聞いてくれないかと言われたので、尋ねてみようかとなった」と説明。議会の際に面談して尋ね、同月15日に電話で教えてもらったと述べた。逮捕時と説明が変わった理由を弁護人に問われ「当初、警察に『村山課長が話している』と言われ、乗っかってしまった」と答えた。
この日は、北代被告の初公判も予定されていたが、地裁は冒頭、分離して公判を進めることを決めた。(羽賀和紀、谷瞳児、華野優気)
市長「全く身に覚えがない」
清藤真司市長は17日、市役所で記者会見を開き、志磨村被告から、入札情報を漏らしたと名指しされたことについて「全く身に覚えがない。どうして自分の名前が挙げられたのか分からない」と述べ、官製談合事件への関与を否定した。
清藤市長は、昨年8月に志磨村、北代両被告と3人で会食した際、北代被告から10万円分の商品券を受け取ったことを認めている。会食の際、入札などの話はしていなかったとし「事件とは無関係。法的にも問題ない」と説明していた。
ただ、今月に入り、北代被告が購入した10万円分の商品券を、同級生を通じて昨年12月にも受け取っていたことが発覚。「道義的、倫理的な責任は大変重い」として今月7日、辞職する意向を表明していた。
清藤市長は、この日の記者会見で「身の潔白を証明する手立てを考えたい」とし、今後の対応を弁護士と検討すると述べた。(冨田悦央)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル